幾年月いくとしつき)” の例文
その幾年月いくとしつき人の酒興しゅきょうを助くる家業なりわいの哀れはかなき、その身の害とは知りながら客の勧むるさかずきはいなまれず
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
立花は涙も出ず、声も出ず、いうまでもないが、幾年月いくとしつき、寝てもさめても、夢に、うつつに、くりかえしくりかえしいかに考えても、また逢う時にいい出づべきことばいまだ知らずにいたから。
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
シャロットの女が幾年月いくとしつきの久しき間この鏡に向えるかは知らぬ。
薤露行 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
広い境内には、幾年月いくとしつきの空気が、しッとりと冷めたかつた。
にはかへんろ記 (新字旧仮名) / 久保田万太郎(著)