幇助ほうじょ)” の例文
それで医術がもっともっと進歩すると、精神のけがでもこれら天然の妙機を人工的に幇助ほうじょすることによって楽に治療できるようになるかもしれない。
鎖骨 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
衣川は罪の一切を自白したが、彼の仕事を幇助ほうじょした仲間に就いては、浅草公園で二三度顔を合わせたばかりで、よくは名前も知らないと云い張っている。
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
やがて自分が自殺幇助ほうじょ罪という罪名で病院から警察に連れて行かれましたが、警察では、自分を病人あつかいにしてくれて、特に保護室に収容しました。
人間失格 (新字新仮名) / 太宰治(著)
第二十五条 国法を遵奉じゅんぽうするは国民たるものゝ義務なり。単にこれを遵奉するに止まらず、進んで其執行を幇助ほうじょし、社会の秩序安寧を維持するの義務あるものとす。
修身要領 (新字旧仮名) / 福沢諭吉慶應義塾(著)
資産家特に成金を寄附金の強制から解放し、彼らの全力を発明家の発見と幇助ほうじょに尽さしめる。
戦争史大観 (新字新仮名) / 石原莞爾(著)
僕が臨検した主な目的は、相手の男を尋問して、無理心中ではなかったか、また、たとえ合意の心中であったにしろ、男の方に自殺幇助ほうじょの事実がなかったかを確かめるためだったのです。
島原心中 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
あるいは何かで強盗の幇助ほうじょをしたとすれば、一つ、たった一つだけ君に質問さしてもらいたい——いったいぜんたい今いった心理状態が、つまりきゃっきゃっわめいたり、大声で笑ったり
それは単に何かのはずみで空想にふけらせられたまでのことで、やはり米友の本質として、それを実行に移して、二人を幇助ほうじょして、夜逃げ、高飛びにうつろうなんぞとは及びもつかぬことです。
大菩薩峠:33 不破の関の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
専ら其一方の教に力を籠めて自から封建社会の秩序に適合せしめ、又間接に其秩序を幇助ほうじょせしめたるが如き、一種特別なる時勢の中に居て立案執筆したる女大学なれば
女大学評論 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
(と検事は、はじめて白い歯を出して微笑ほほえみ、芸術家の肩をそっと叩いて、)そうで無ければ、私は今すぐあなたを、未決檻に送るつもりでいたのですよ。殺人幇助ほうじょという立派な罪名があります。
女の決闘 (新字新仮名) / 太宰治(著)