市兵衛いちべゑ)” の例文
旧字:市兵衞
南瓜は綽号あだなだよ。南瓜の市兵衛いちべゑと云つてね。吉原よしはらぢや下つぱの——と云ふよりや、まるでかずにはいつてゐない太鼓持たいこもちなんだ。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
「あれ、巣を御存知ないの。この間、門の前の市兵衛いちべゑの子がもつて参りましたでせう。」
鳩の鳴く時計 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
しないばかりなら、よかつたんだが、何かの拍子ひやうしに「市兵衛いちべゑさんお前わちきれるなら、命がけで惚れなまし」
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
客は、襖があくと共に、なめらかな調子でかう云ひながら、うやうやしく頭を下げた。これが、当時八犬伝に次いで世評の高い金瓶梅きんぺいばいの版元を引受けてゐた、和泉屋市兵衛いちべゑと云ふ本屋である。
戯作三昧 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
人を殺したつて、殺さなくつたつて、見た所はやつぱりちんちくりんの、由兵衛奴よしべゑやつこにフロツクを着た、あの南瓜の市兵衛いちべゑが、それでもそこにゐた連中にや、別人のやうに見えたんだらう。
南瓜 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)