崔嵬さいかい)” の例文
そのくらいに周囲はどす黒かった。漢語には崔嵬さいかいとか巑岏さんがんとか云って、こう云う山を形容する言葉がたくさんあるが、日本には一つも見当らない。
満韓ところどころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その女の顔をどこかで見たようだと思ったら、四五日まえに鎌倉で泳いでいるのを見かけたのである。あんな崔嵬さいかいたる段鼻は日本人にもめったにない。
田端日記 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
五竜岳の崔嵬さいかいに続いて鹿島槍ヶ岳の峰頭には、白毛の如き一簇いっそうの雲がたむろしている。祖父岳から岩小屋沢岳、鳴沢岳、赤沢岳にかけて尾根は余程低くなる。
黒部川奥の山旅 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
茂倉、一ノ倉、谷川富士、谷川岳の諸山は、附近に比類のない崔嵬さいかいたる姿を呈して、西山の土に蟠崛している。赤谷あかや川上流の上越国境では、仙ノ倉山の外は識別するを得なかった。
秋の鬼怒沼 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)
就中なかんずく駒ヶ岳から中ノ岳に至る連嶂は、崔嵬さいかいたる山容と雄渾ゆうこんなる峰勢と相俟あいまって、槍穂高の山塊を想起せしむるものがあるのみでなく、北又川の上流に面して多数の雪渓を懸け連ねているので
利根川水源地の山々 (新字新仮名) / 木暮理太郎(著)