山下町やましたちょう)” の例文
それから橋を渡り、暗い公園を脱け、この山下町やましたちょうりこんで来ても、この執念深しゅうねんぶかい尾行者たちは一向退散の模様がないのである。
疑問の金塊 (新字新仮名) / 海野十三(著)
八重その年二月の頃よりリウマチスにかかりて舞ふ事かなはずなりしかば一時ひとしきり山下町やましたちょう妓家ぎかをたたみ心静に養生せんとて殊更山の手の辺鄙へんぴを選び四谷荒木町よつやあらきちょうに隠れ住みけるなり。
矢はずぐさ (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
明治節の朝、朝香宮あさかのみや妃殿下の薨去こうきょが報ぜられた。風が寒かったが日は暖かであった。上野から省線で横浜へ行って山下町やましたちょうの海岸のプロムナードで「汽船のいる風景」をながめた。
柿の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)