屍灰しかい)” の例文
ゴチック風の表飾りのある旅館の湿気しけた寝台のうへには、滅びた恋の野辺の送りをするために、屍灰しかいさながらのあじわひをたがいの唇のうへになほも吸ひ合ふ恋人たちの横たはつてゐるのを。
水に沈むロメオとユリヤ (新字旧仮名) / 神西清(著)
神秘の火はわれらの弱点を焼きつくし、神聖な剣は煩悩ぼんのうのきずなを断つ。われらの屍灰しかいの中から天上の望みという不死の鳥が現われ、煩悩を脱していっそう高い人格が生まれ出て来る。
茶の本:04 茶の本 (新字新仮名) / 岡倉天心岡倉覚三(著)