尻切しりきり)” の例文
事件の筋道が尻切しりきりトンボになって、有耶無耶うやむやになった不愉快さといったらないね。
近眼芸妓と迷宮事件 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
『浮雲』第三篇は作者の日記の端に書留めた腹案に由ると、お勢の堕落と文三の絶望とに終るのだが、発表されたものを見ると、腹案の半ばにも達しないで中途から尻切しりきりとんぼに打切られておる。
二葉亭四迷の一生 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
見たていは、せた尻切しりきりの茶の筒袖つつッぽを着て、袖を合わせて、手をこまぬき、紺の脚絆穿きゃはんばき草鞋掛わらじがけの細い脚を、車の裏へ、蹈揃ふみそろえて、と伸ばした、抜衣紋ぬきえもん手拭てぬぐいを巻いたので、襟も隠れて見分けは附かぬ。
陽炎座 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)