小理窟こりくつ)” の例文
悪いのは悪い、好いのは好いと、真情を吐露して了うけえ、好いですけどもナ。どうもいかん。小細工で、小理窟こりくつで、めそめそ泣きおった……
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
今後少し頭脳あたまの良い書生は、あるいは小理窟こりくつ饒舌しゃべれるようになるかも知れないが、その精神の卑しいことは一層卑しくなるだろうと心配している。
今世風の教育 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
うん、さうだ、もうあまり、おれたちのがらにもない小理窟こりくつさう。おれたちのお父さんにすまない。お父さんは九つの氷河を持っていらしゃったさうだ。
楢ノ木大学士の野宿 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
「ちぇッ、また周馬が小理窟こりくつをならべだした。時刻を移して、かれに先手を打たれては大変だ。お十夜! こんにゃく問答をしている場合ではあるまい、すぐに行こう!」
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
また、何かとそんな小理窟こりくつを並べたって、なあに、もともと遊びが好きなのさ、なまけ者の、助平の、身勝手な快楽児なのさ、とれいの牛太郎がせせら笑って言うかも知れません。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
うん、そうだ、もうあまり、おれたちのがらにもない小理窟こりくつそう。おれたちのお父さんにすまない。お父さんは九つの氷河を持っていらしゃったそうだ。
楢ノ木大学士の野宿 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
宇喜多は多年わが毛利方の一翼だったが、利を見て信長へかんつうじた者である。これも是非なし、敵に武門の節義を売ろうというほどな者には、またその人間だけの小理窟こりくつと打算があるにちがいない。
新書太閤記:06 第六分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)