密貿易ぬけがい)” の例文
済州さいしゅう梁山泊りょうざんぱくのほとり石碣村せっかそんに住んで、日ごろは、江の浦々で漁師すなどりしているが、水の上の密貿易ぬけがいも、彼ら仲間では、常習とされている。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
毎夜のように密貿易ぬけがいの船頭が入り込み、船澗ふなまへけしからぬ水馴竿みなれざおを振込むのを知らずにいるようでは、たいした器量人と思えない
うすゆき抄 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
海外をかけての密貿易ぬけがいたちの跳躍ちょうやくも、帰するところ、どれ一つとして、腐った池が生む成長物でないものはない。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
元禄の半頃なかごろから、西国方面の密貿易ぬけがい仲間は、急激に、数と力を加え、莫大な利をしめて、巨財をもつと共に、外国製の武器、火薬なども、ひそかに、諸所の島へたくわえ出した。
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山東さんとう河北かほく密貿易ぬけがい仲間の者から、耳よりなもうけぐちをチラと聞きこみ、こんな大ヤマを張れる相談相手は、托塔天王たくとうてんのう、いやちょう旦那よりほかに、誰があろうと、お見込み申して
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「その辺、刑部の腹は、おれたちには分らねえ。刑部が西国浪人や密貿易ぬけがい仲間と、そんな陰謀をもっていたと、俺たちに打明けたのは、あいつが死んだ、その日の事だったのだから」
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)