密着くつつ)” の例文
沢庵漬は上に加はる圧迫が大きければ大きいだけ、お互に密着くつつき合ひちゞめつけ合ふのである。が、労働者は沢庵であるか。
工場の窓より (新字旧仮名) / 葉山嘉樹(著)
特に濡れた白襦袢一枚のぴつたりと身に密着くつついて、殆んど骨ばかりの人間が岩上に佇んで居るとしか見えない。
古い村 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
みのるの着物の裾はすつかり濡れて、足袋と下駄の臺のうしろにぴつたり密着くつついては歩行あゆみのあがきを惡るくしてゐた。早い足の義男にはても追ひ付く事が出來なかつた。
木乃伊の口紅 (旧字旧仮名) / 田村俊子(著)
彼は工場の窓を乗りこえると、人々の寝息を窺ひながら、叮嚀に自分が配つたビラを一枚一枚ふつてみて、おふくろの小為替がビラに密着くつついてゐないかどうかを調べだした。
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
せめて疵口くち悉皆すつかり密着くつつくまで沈静おちついて居て下され、と只管とゞめ宥め慰め、脱ぎしをとつてまたすれば、余計な世話を焼かずとよし、腹掛着せい、これは要らぬ、と利く右の手にて撥ね退くる。
五重塔 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)