家名いえな)” の例文
「引っ張られるのを待っている面々もある。一人々々家名いえなで書いてあるから、誰の先祖か分る。参考の為めに回覧にしようと思って持って来た」
田園情調あり (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
楊弓場ようきゅうばの軒先に御神燈出すこといまだ御法度ごはっとならざりし頃には家名いえな小さく書きたる店口の障子しょうじ時雨しぐれゆうべなぞえのき落葉おちばする風情ふぜい捨てがたきものにてそうらひき。
葡萄棚 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
家名いえなも何も構わず、いまそこも閉めようとする一軒の旅籠屋へ駈込かけこみましたのですから、場所は町の目貫めぬきむきへは遠いけれど、鎮守の方へは近かったのです。
雪霊続記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)