媚色びしょく)” の例文
が、その美しさもいわゆる俳優的な遊惰な媚色びしょくであって、どの線どの陰影の中にも、思索的な深みや数学的な正確なものが現われ出てはいない。
黒死館殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
千坂も弱り果てて、しまいには、邸にひきとって、監視をつけておいた、その監視に媚色びしょくを送って、座敷牢をやぶって逃げてしまうという女じゃ、女にしては、めずらしい
かんかん虫は唄う (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼の望む美魚はどうしても童女型の稚純を胴にしてそれに絢爛やら媚色びしょくやらを加えねばならなかった。そして、これには原種の蘭鋳より仕立て上げる以外に、その感じの胴を持った金魚はない。
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)