妬婦とふ)” の例文
島五六郎を自滅じめつさせたかつたのだ、——その爲に千本の家まで潰れるかも知れないことを考へても居なかつた、——昔から妬婦とふ程恐ろしいものはないといふよ
けれども毒飼は最もケチビンタな、しらみッたかりの、クスブリ魂の、きたない奸人かんじん小人妬婦とふ悪婦の為すことで、人間の考え出したことの中で最も醜悪卑劣の事である。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そうかと思うと妬婦とふお吉が、養子一件を聞き知って、ぶちこわしに楢屋へ乗り込むという。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
悪人の女を含まぬ歌舞伎かぶき芝居も、ずっと昔からある悪女を改めて善人にして出すということは出来ないことであるし、又そういう妬婦とふのあることによって善人の女が更に引立つのである。
役者の一生 (新字新仮名) / 折口信夫(著)
こう決心した妬婦とふお藤、与吉をちょろまかして足をとめておくが早いか自らはスルリと抜けて、辻斬りの下手人浪人丹下左膳の所在を訴状にしてポン! と浅草橋詰の自身番へほうりこんだ。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
恐ろしいのは妬婦とふと昔から言って居るよ。こうなると女の知恵は孔明楠だ。——それから素知らぬ顔をして家へ入ったが、亭主の造酒助は、薄々感付いても、あばき立てるわけに行かない。
人の世の裏をいく執拗しつよう妬婦とふの胸中に変わろうとしていた。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)