女形をやま)” の例文
六部のかたが來てびつくりした樣子で介抱して居るところへ、女形をやまの方や、いろ/\の方が驅け付け、それからお役人樣方が見えました。
僕は先代の秀調以来、名高い女形をやまも少しは見てゐる。が、まだこの時の金太郎氏ほど、美しいと思つた記憶はない。古意を得るのは勿論もちろん結構であらう。
金春会の「隅田川」 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
男をんなの夏の中夜の秘戯たはむれをかういふ昼の悩ましさにかろく描きつづけてゐた歌麿の気持、まだ暮れもやらぬ昼の舞台に黄色いラムプをともす若い女形をやまの心持、白芥子の花にまつはる昼の幽霊
桐の花 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
脚本に聴きとれてゐるこの女形をやまが、腑に落ちなささうに瞬きをして
「芝居氣があるし、女形をやまになれる男だよ。恐ろしくニチヤニチヤして一種うつたうしい女形のせゐさ。まげが大きかつたのはかつらのためだ」
女形をやまの心得11・18(夕)
さらつてやらうといふ相談で、先づ手始めに拵へたのが『息子番附』その實は『美男番附』その中から、立役も女形をやまもきめようといふ寸法で
「いえ、騷ぎが此處へ聞えたのは、それから少し經つてからですが、馬道の良助親分が、女形をやまになつて山へ行つたのは、多分敵討騷ぎの最中だつたでせう」
綺麗な新造に化けて子供をさらつたのは、お紋ではなくて和吉だつたのさ——あれはなか/\腕の良い女形をやまだ。
座頭ざがしらの明石村右衞門は、四十過ぎの立ち役で、これはなか/\の達者、女形をやまの大磯虎三郎は、名前に似ず不景氣な役者ですが、二枚目の小磯扇次といふ、白塗の若侍は、なるほど
平次は錫杖などに構はず、その次に小さくなつて居る女形をやまに問ひかけました。
女形をやまは矢張り花見鬘か何か——」
銭形平次捕物控:050 碁敵 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)