奥曲輪おくぐるわ)” の例文
女たちばかりの奥曲輪おくぐるわには、表の戦況せんきょうもとんと知れなかったが、伊丹城の運命は、それより数ヵ月前からすでに傾き出していた。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
彼は城中に入るとすぐ、大広間を用いて、斎藤内蔵助くらのすけ以下、多くの留守居衆にえつを与え、各〻から挨拶をうけて後、初めて奥曲輪おくぐるわに入った。
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この方面の火は、さきに城中の者がみずから放った奥曲輪おくぐるわの火とつながって、忽ち半城を蔽うばかりの火勢となった。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まるで奥曲輪おくぐるわ玩具おもちゃみたいに見られていた長閑斎は、この日、光秀光春の妻子から老幼すべての者の最期までを見届け終ると、やがて矢倉にのぼっていた。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
各〻はすぐ手勢をひいて、姫路の急援きゅうえんにお急ぎあれ。蔵光正利は老人なれば、奥曲輪おくぐるわをお守りあるがよい。陶義近すえよしちかどのは、城外へ出て、姫路口と連絡にお当りあれ——。
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
為に、行事も中止となり、奥曲輪おくぐるわは、ひッそりかんとしたものだったが、本間三郎の取巻きどもは
私本太平記:03 みなかみ帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
と、人の顔を見るなり誰にでも呶鳴どなって、やがてまろぶが如く、奥曲輪おくぐるわのほうへ馳けこんでいた。
ご一族の小川殿も知らぬはずはなく、奥曲輪おくぐるわの女房たちにも、同腹の者がいたことは疑えませぬ。そのほか村井、蔵光、益田などの老臣衆も、悉く承知のうえで、主君のご息女を
黒田如水 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
奥曲輪おくぐるわの女房方も和子わこたちにも久しぶりでお目にかかって来ましょう」
新書太閤記:07 第七分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
言い残して、彼一人、兵の影にいて奥曲輪おくぐるわの路地を曲がって行った。
私本太平記:07 千早帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
涼州の地は支那大陸の奥曲輪おくぐるわである。
三国志:08 望蜀の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)