天性うまれつき)” の例文
升屋の老人の推測は、お政の天性うまれつき憂鬱ゆううつである上に病身でとかく健康すぐれず、それが為に気がふれたに違いないということである。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
顔や肌の素地きじ天性うまれつきだから、どんなに磨いたところで、しれていますが、しかし心の化粧は、すればするほど美しくなるのです。
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
大槻芳雄というのは延貴のひと息子むすこで、少からぬ恩給の下る上に遺産もあるので、出来るだけ鷹揚おうようには育てたけれど、天性うまれつき才気の鋭い方で、学校も出来る
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
天性うまれつき目性の好くないお島は、いつの頃からこの医者に時々かかっていたか、分明はっきり覚えてもいないが、そこにいたお花と云う青柳のめいにあたる娘とも、遊び友達であった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
いやしい女の腹に出来たとはいうものの、生まれ落ちるとそのままいまの乳母の手に育てられて淋しい郊外に人となったので、天性うまれつき器用な千代子はどこまでも上品で
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)
自分の秘密を知らぬものの推測としてはこれが最も当っているので、お政の天性うまれつき瘻弱ひよわなことは確に幾分の源因を為している。もしこれが自分の母の如きであったなら決して自殺など為ない。
酒中日記 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
陰欝な、沈みがちな私はまた時として非常に物に激しやすい、卒直な天性うまれつきを具えている。
駅夫日記 (新字新仮名) / 白柳秀湖(著)