大目付おおめつけ)” の例文
何でもつい二、三日前御本丸で御役替おやくがえがありまして、大目付おおめつけ鳥居様とりいさまが町奉行におなり遊ばしてからにわかに手厳しい御詮議ごせんぎが始まったとやら。
散柳窓夕栄 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
半蔵の家で幕府の大目付おおめつけ山口駿河するがを泊めた前あたりのころに、すでにその年の米穀は熟するだろうかと心配したくらいだった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そして、こういう訴えをとりあげてさばく、大目付おおめつけという役柄も、あいてが殿さまのつぎにくらいする城代家老では、手も足もでるものではありません。
亡霊怪猫屋敷 (新字新仮名) / 橘外男(著)
都筑駿河はかつて勘定奉行であり、神保佐渡は大目付おおめつけであった閲歴を持つ人たちである。下々の役人のようにいばらない。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大目付おおめつけをもて幕府の執政をあらためざれば政事ついに改革の実を行ふ事能はずとて一通の意見書を托せしに、木村某その書を大目付に出して其のまま逐電すと告る者あり。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
旧幕府の大目付おおめつけで外国奉行を兼ねた山口駿河守するがのかみなぞまで——御一新以前だけでも、それらの歴史の上の人物はいずれもこの旧本陣に時を送って行った。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
江戸在府の譜代の諸大名、陸軍奉行、歩兵奉行、騎兵頭、剣術と鎗術そうじゅつと砲術との諸師範役、大目付おおめつけ、勘定奉行、軍艦奉行なぞは供奉ぐぶの列の中にあった。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)