大狼狽だいろうばい)” の例文
と——、そのあとから商売がらにも似合わずに大狼狽だいろうばいで、血色を失いながら駆けだしたものは、だれあらぬ鳶頭の金助自身でありました。
はッはッはッ、慌てました、いや、大狼狽だいろうばい。またしても獅噛しかみったて。すべて、この心得じゃに因って、鬼の面をかぶります。
星女郎 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
その計画はたいへん巧く行った。これなら大丈夫と思っていたところ、意外にも意外、君が姙娠してしまったので、速水は大狼狽だいろうばいを始めたのだ。
三人の双生児 (新字新仮名) / 海野十三(著)
しかるに管下の末寺から逆徒が出たといっては、大狼狽だいろうばいで破門したり僧籍を剥いだり、恐れ入り奉るとは上書しても、御慈悲と一句書いたものがないとは、何という情ないことか。
謀叛論(草稿) (新字新仮名) / 徳冨蘆花(著)
ア! そうか!——と、そこまでは気がつかなかった愚楽老人、大狼狽だいろうばいをかくして
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
女中がそのことをしらせに、ばたばたとやって来たもんですから、彼は大狼狽だいろうばいで、洋服を引っ抱えたまま庭へ飛び降りたのはよかったけれど、肝腎かんじんの帽子が床の間に置き忘れてあるじゃありませんか。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
と、少年の姿に戻った僕は大狼狽だいろうばいであたりを見まわした。ところが僕の前にはさっきと同じく、十四五人の男女学生やカビ博士が熱心に僕を見つめている。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
今までの落ちつきをうしなって、日頃の蜂矢には見たくても見られないほどの大狼狽だいろうばいだ。どうしたのだろう。
金属人間 (新字新仮名) / 海野十三(著)
と云い捨てて、裏の便所の方から、大狼狽だいろうばいの態で出ていった。杜はホッと溜息をついた。
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
烏啼は、つと立って奥へ入った、大狼狽だいろうばいの貫一と艶麗えんれいなるお志万をうしろに残して……