多武峰とうのみね)” の例文
お豊は仮橋から向うを見渡したけれど、桜井の町の燈火あかりが明るく見え、多武峰とうのみねが黒ずんでいるほかには人の影とては見えないのであります。
西生駒いこま信貴しぎ、金剛山、南吉野から東多武峰とうのみね初瀬はつせの山々は、大和平原をぐるりとかこんで、蒼々そうそうと暮れつゝある。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
多武峰とうのみねの増賀上人、横川よかわ源信げんしん僧都そうず、皆いずれも当時の高僧で、しかも保胤には有縁うえんの人であったし、其他にも然るべき人で得度させて呉れる者は沢山有ったろうが
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
多武峰とうのみねという山と背くらべをしているように見えますが、その多武峰には昔から、藤原鎌足ふじわらのかまたりを祀っておりますゆえに、高見山の方には蘇我入鹿そがのいるかが祀ってあるというようになりました。
日本の伝説 (新字新仮名) / 柳田国男(著)