壺坂つぼさか)” の例文
「人間には嬉し泣きってものがある。松王まつおうに泣き笑いがあるように、壺坂つぼさかたに沢市さわいちとおさとに嬉し泣きをさせたら何うだろうと思う」
心のアンテナ (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
五十年輩の三味線弾しゃみせんひきを一週に何度か日を決めて家へ迎え「揚屋あげや」だの「壺坂つぼさか」だの「千代萩せんだいはぎ」に「日吉丸ひよしまる」など数段をあげており、銀子も「白木屋」から始めた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
呂昇が堀川のお俊や、酒屋のお園や、壺坂つぼさかのお里を語るは、自己を其人にたくするのだ。同じ様な上方女かみがたおんな、同じ様な気質きだての女、芸と人とがピッタリ合うて居るのだ。悪かろう筈がない。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
それは尾上楽之助、嵐吉松郎あらしきちまつろう、実川実太郎など十余人に東京の少年俳優が幾人か加わって、「相馬良門そうまのよしかど」や「壺坂つぼさか」などを上演し、楽之助の沢市なぞは好評であったが、これも長くは続かなかった。
明治劇談 ランプの下にて (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)