墨汁すみじる)” の例文
此奴こいつかおの黒いこと、鍋墨なべずみ墨汁すみじるとを引っ掻き交ぜて、いやが上に、ところきらわず塗り立て掃き立てたと見えて、光るものはただ両つの白眼しろめばかりの、部厚な唇だけを朱紅に染めてから
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
燕作は見張り番の性根しょうねを呼びさまして、「あッ!」とばかりはねかえり、窓の戸をガラッとあけて空をみると、いましも、打ちあげられた狼煙のろしのうすけむり、水に一てき墨汁すみじるをたらしたように
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)