さへ)” の例文
七月が來て觀音樣の晩になれば、町のわかい娘たちはいつも奇麗な踊り小屋をこさへて、華やかな引幕をひきその中で投げやりな風俗のうき々とさへづりかはしながら踊つた。
思ひ出:抒情小曲集 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
平次はようやくとぐろをほぐしました。うぐひすの聲がまた一とさへづり、日向ひなたはほか/\と暖まつて、貧乏臭い長屋住ひですが、お靜は自分の幸福を、胸一杯に抱きしめたい氣になるのです。
ある日、彼はいつものやうに庭へ出て、自分の墓を立てる所に選んだ松の木の下にしやがんで、今更のやうに自分の松林の美しいのをながめてゐた。頬白ほゝじろがいゝ声で近くの松の梢にさへづつてゐた。
(新字旧仮名) / 相馬泰三(著)
「手前が妹に教はつて、蒙求もうぎうさへづる間、奧の一と間ぢや何をやつたんだ」