喜久井町きくいちょう)” の例文
漱石の内は牛込うしごめ喜久井町きくいちょう田圃たんぼからは一丁か二丁しかへだたつてゐない処である。漱石は子供の時からそこに成長したのだ。
墨汁一滴 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
喜久井町きくいちょうにかえると、老母ばあさんは、膳立ぜんだてをして六畳の机の前に運んで来た。私はそれを食べながら、かねの工面をして、出かけようとすると
うつり香 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
牛込の喜久井町きくいちょう根岸ねぎし谷中初音町やなかはつねちょう日暮里金杉にっぽりかなすぎ等々、本田はそうして春泥の約二年間に転居した場所を七つ程列挙した。
陰獣 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
今私の住んでいる近所に喜久井町きくいちょうという町がある。これは私の生れた所だから、ほかの人よりもよく知っている。
硝子戸の中 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
あの交番——喜久井町きくいちょうを降りてきた所に——の向かいに小倉屋おぐらやという、それ高田馬場の敵討あだうちの堀部武庸たけつねかね、あの男が、あすこで酒を立ち飲みをしたとかいうますを持ってる酒屋があるだろう。
僕の昔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)