啜泣すゝりなき)” の例文
忽ち啜泣すゝりなきの聲の背後うしろに起るあり。背後はキケロの温泉いでゆの入口にて、月桂ラウレオ朱欒ザボンの枝繁りあひたれば、われは始より人あるべしとは思ひ掛けざりしなり。
くびから彼女の小さな手をゆるめて接吻をし、不思議な感動で彼女に向つて泣き、私の啜泣すゝりなきが靜かなすこやかな休息を破ることを恐れて彼女の許を去つたのを。
精霊しやうれいの日本の秋の啜泣すゝりなきひ取る如し、泣く如し。
緑の種子 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
聲高こわだかな口論も、喧嘩も、反抗または挑戰もなく、涙も、啜泣すゝりなきの聲もなく、數語が口にされ、結婚に對するおだやかに口にされた抗議があり、嚴しい、短い質問がロチスター氏によつて發せられ、返答
そして低い、烈しい啜泣すゝりなきの聲が聞えた。