呵嘖かしゃく)” の例文
されども不良の子にくるしめらるるの苦痛は、地獄の呵嘖かしゃくよりも苦しくして、しかも生前現在の身を以てこの呵嘖に当たらざるを得ず。
教育の事 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
むかし娘がいたが、父母に知らせずひそかに一人の青年に接した。青年は父母の呵嘖かしゃくを恐れて、やや猶予のいろが見えた時に、娘が此歌を作って青年に与えたという伝説がある。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
従って彼の呵嘖かしゃくは彼の慈悲であった。道元はこのことについて言っている、——浄和尚は僧堂において眠る僧を峻烈に呵嘖したが、しかし衆僧は打たれることを喜び、讃嘆したものである。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
かく道元の説く慈悲の前には、「悪は必ずしも呵嘖かしゃくすべきものでない」。このことを証するものとして道元の次の言葉をあげることができる。あるとき故持明院じみょういんの中納言入道が秘蔵の太刀たちを盗まれた。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)