味醂みりん)” の例文
味醂みりん屋へまた二十円貸せちうて来たんやないか……味醂屋にはこの春家出する時三十円借りがあるんやで。うそんな厚かましいことが言はれたもんやな。」
鱧の皮 (新字旧仮名) / 上司小剣(著)
ナンバンショノカス 越後では我々のいう味醂みりん粕のことをそう呼んでいる(出雲崎)。ナンバンショはすなわち南蛮酒で、この酒製法の輸入の際にできた名である。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
新「あゝ海苔で、吸物は何か一寸見計みはからって、あとは握鮓がいゝ、おい/\、お酒は、お前いけないねえ、しかし極りが悪いから、沢山は飲みませんが、五勺ごしゃくばかり味醂みりんでも何でも」
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
多数の厨婦が砂糖や味醂みりんの崇拝と妄用によって却って真の美味を害する結果を生ずると同様に、多数の人々は富の崇拝、貧のいやがりに因って、却って真の幸福を自害自損している。
貧富幸不幸 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
皮を破らぬようにするので、割合に早く煮えるものです。そこへ花鰹、醤油、味醂みりんなどを順々に静かに注いで仕上げます。そっくり皿に取りますが、それを剥しながら食べるのがお好きでした。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
古い針箱のそばによせて、小さな味醂みりんかめの片づけずに置いてあるのもお民をほほえませた。姑のような年取った女の飲む甘いお酒が押入れの中に隠してあることをお民も知っているからであった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
味醂みりんて、たかいもんだねえ、一合二十八銭もするよ」
鏡餅 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)