こぼ)” の例文
こぼしたといふ事だ。だが、それはトルストイが無理なので、学問の余り頼みにならないのは、何もお医者のに限つた事ではない。
田といふ田には稻の穗が、琥珀こはく色に寄せつ返しつ波打つてゐたが、然し、今年は例年よりも作がずつと劣つてゐると人々がこぼしあつてゐた。
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
その日の夕方、いつものように来て、藤木さんは母にこぼしていた。
こぼした事があつた。そして相手の農夫ひやくしやうが値上げの張本人であるかのやうにじつとその顔を見つめた。顔は焼栗のやうに日にけてゐた。
田といふ田には稲の穂が、琥珀色に寄せつ返しつ波打つてゐたが、然し、今年は例年よりも作がずつと劣つてゐると人々がこぼしあつてゐた。
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
母は気が弱いので、う目尻を袖口で拭つて、何か独りで囁※ぶつぶつこぼしながら、それでも弟に呍吩いひつけられたなりに、大鍋をガチヤ/\させて棚から下してゐた。
刑余の叔父 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)