口授こうじゅ)” の例文
秀吉は、浴後の身をへ揚り屋の腰掛にかけると、まだ乾かぬ汗を拭き拭き、小姓の古参福島市松を前に呼んで、こう軍令を口授こうじゅした。
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
時に先生筆硯ひっけんはなはだ多忙なりしがため余に題材を口授こうじゅにわかに短篇一章を作らしむ。この作『夕蝉ゆうせみ』と題せられふたたび合作の署名にて同誌第一号に掲げられぬ。『伽羅文庫』は二号を出すに及ばずして廃刊しき。
書かでもの記 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
と、頼み事を口授こうじゅして、一通をしたためさせた。終ると、自身署名して封緘ふうかんをし、べつな家従の者に持たせて、すぐ本家祝朝奉しゅくちょうほうの居館へと、いそがせてやった。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
以上は、書付触れであったが、そのほか口授こうじゅ伝令で、麓の諸部隊にまで告げ渡って行ったことばには
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)