劉生りゅうせい)” の例文
蒙陰もういん劉生りゅうせいがある時その従弟いとこの家に泊まった。いろいろの話の末に、この頃この家には一種の怪物があらわれる。
生徒といえば、あの納壺の熊の毛皮の傍にいた赤毛の大目玉の女の子や、アイヌ式の、または劉生りゅうせい式の童男童女どもだろうと思うと、それもあわれであった。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
Sは口ごもって、ひどくはにかんだように物を言う癖があったのである。幼い岸田劉生りゅうせい氏があるいはそのころ店先をちょこちょこ歩いていたかもしれないという気がする。
銀座アルプス (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
それは女史が秘蔵している岸田劉生りゅうせいの麗子ちゃんの像であったが、その額がぶくぶくと浮きつ沈みつ部屋のすみの方へ流れて行くのを、女史も妙子も恨めしそうに見送っているより外はなかった。
細雪:02 中巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)