剛腹ごうふく)” の例文
三郎兵衛、何をろうとするのであろう? 広海屋のいのちを狙うに相違ないが、まさか、易々やすやすと、あの剛腹ごうふくな男を殺すことは出来まい。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
加うるに彼の性質は既にねじけ、剛腹ごうふくで執拗であるから、長き牢獄生活に次第に兇暴になったのは敢て不思議ではない。
支倉事件 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
剛腹ごうふくな鳰鳥も眼を見張った。つづいて彼女の心の中へ、行って観たいという慾望が、ムクムクと頭を持ちあげた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
きみはあまりに心労しすぎるよ、ドノバンがいかに剛腹ごうふくでも、この冬までにはかならず帰ってくるよ。四人がいかに力をあわしても、きびしい冬とたたかうことはむずかしい。
少年連盟 (新字新仮名) / 佐藤紅緑(著)
その結果一つの集団的意識が生じて、それが宗教および道徳上の一律な覆面の下に、個人的差異——それらの剛腹ごうふくな個性の間にもっとも強く現われる差異——をおおいかくしていた。
「なるほど剛腹ごうふくなおじいさんだ」
鳴門秘帖:05 剣山の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)