前岸かわむこう)” の例文
前岸かわむこうの巨木からさがった鉄鎖てつさのような藤葛ふじかずらが流れの上に垂れて、そのはしが水のいきおいで下流になびき、またね返って下流に靡いているのが見えた。
仙術修業 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
彼の体は前岸かわむこうの平らかな岩の上に持って往かれた。彼は三年目にしてはじめて白竜山の本山ほんざんの中へ一歩を入れることができた。彼はよろこんで岩をつとうて往った。
仙術修業 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その藤葛が横に靡けば、前岸かわむこうそばだったたいらかな岩のぱなに往かれそうである。彼はそれに眼をつけた。
仙術修業 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
そこで南にむかって舟をやり、前岸かわむこうに着いて、船頭にたくさんの礼をやって帰った。
竹青 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
前岸かわむこうになった西の堤から大きな声が聞えて来た。常七は草鞋の手を止めた。
八人みさきの話 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)