刳舟くりぶね)” の例文
食事がすんで、いよいよ出発という時になって、清水岩吉が、この蘇鉄の樹で刳舟くりぶねを作って、舟で行ったらどうだろうという意見を持ち出した。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
最初は岩の突出かと思いましたが、なるほど、舟だ、その舟も、どうやらバッテイラ形で、土人の用うるような刳舟くりぶねでないことを、かすかに認めると安心しました。
大菩薩峠:41 椰子林の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
刃物のない土人も舟を作っているが、それは刳舟くりぶねで、焼切りにして作ったものであったらしい。
故郷七十年 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
木の幹からえぐり出したアイヌの舟は、私が日本で見たどの「刳舟くりぶね」とも違った形をしていた。
白き帆のたわむ刳舟くりぶね
小曲二十篇 (新字旧仮名) / 漢那浪笛(著)
刳舟くりぶねは、死んだように、小波ひとつ立てないとろりとした沼の面をすべって行った。
地底獣国 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)