函数かんすう)” の例文
旧字:函數
七月下旬に沓掛へ行ったときは時鳥ほととぎすが盛んに啼いたが、八月中旬に再び行ったときはもう時鳥を聴くことが出来なかった。すべては時の函数かんすうである。
KからQまで (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
即ち言語を機械学的に配列したり、韻律を力学によって法則したり、あるいはピラミッド形の象形詩形を造ったりして、一種の新様式に於ける函数かんすう的クラシズムを創造した。
詩の原理 (新字新仮名) / 萩原朔太郎(著)
それをやるには、積雪が高度と森林密度との二つの要素の函数かんすうである場合の取扱い方をきめる必要がある。その点はまだどこでもやっていないので、その話をして御免ごめんこうむった。
ネバダ通信 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
古代は実体概念によって思考し、近代は関係概念或いは機能概念(函数かんすう概念)によって思考した。新しい思考は形の思考でなければならぬ。形は単なる実体でなく、単なる関係乃至ないし機能でもない。
人生論ノート (新字新仮名) / 三木清(著)
しかしこの昼と夜との二つの光景を見る順序が逆であったら、心持ちはまたおのずからちがったことであろう。批判はやはり「履歴の函数かんすう」である。
試験管 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
俳句がいわゆる「不易」なものの一断面「流行」の一つの相を表現したものである以上、人の句を鑑賞する場合における評価が作者と鑑賞者との郷土や年齢やの函数かんすうで与えられるのは当然であろう。
思い出草 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
普通力学の問題において、運動方程式が完全に解かれた場合には、すべての質点の各位置における速度、加速度、運動量、あるいはエネルギーのごときものが、それぞれ時の函数かんすうとして与えられる。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
人々の頭脳の現在はその人々の過去の履歴の函数かんすうである。
読書の今昔 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)