凝固かたま)” の例文
母親は、笛を手に取ると、古い埃や泥のようなもので凝固かたまってしまった孔内は、吹こうにも息の抜けみちがないために音色が出なかった。
後の日の童子 (新字新仮名) / 室生犀星(著)
「血が、十分に凝固かたまっていぬところを見ると、斬って間も無いが——一刀で、往生しとる。余程の手利きらしい」
南国太平記 (新字新仮名) / 直木三十五(著)
水へ入れて冷ますと凝固かたまりますからゼリーのように型をちょいと熱い湯につけないでもポンと皿へあければ直ぐ抜けます。それを匙で食べると美味おいしゅうございます。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
この沛然はいぜんと降る豪雨に、無事な筈はなく、雨漏りをさけて遁げ廻った末、やっと楽屋の隅で、ひと凝固かたまりになって、横になる事が出来たのは、もう大分夜が更けてからだった。
夢鬼 (新字新仮名) / 蘭郁二郎(著)
人間として不自然なかたくななかたち凝固かたまっていることに気づいた。
親鸞 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
うるしのごとく寂しく凝固かたまりたるそこ見え
忘春詩集:02 忘春詩集 (新字旧仮名) / 室生犀星(著)