假病けびやう)” の例文
新字:仮病
「それぢや、下手人は矢張り高木勇名といふ浪人でせうか。隨分いろ/\の假病けびやうつかひも見たが、あいつは念入りですね」
一年につた一度の井戸がへで、家主のおれまでが汗みづくになつて世話を燒いてゐる。そのなかで假病けびやうの晝寢なぞをしてゐて、長屋の義理が濟むと思ふか。
権三と助十 (旧字旧仮名) / 岡本綺堂(著)
「町内の本道——本田良全りやうぜんさんが來てゐるから嘘や假病けびやうぢやありません。二年前から、ほんものゝ病氣で——」
假病けびやうをつかつて、首尾よく親分の懷中は拔きましたが、路用がまだ殘つて居るとは氣が付きません。
「一番氣の毒なのは和泉屋のせがれ嘉三郎さ。戀患ひの假病けびやうなんてものは、ゴロゴロ寢てゐるんだから、樂なやうだが、本人にして見れば、ハタで見たほど樂ぢやあるめえ」
「娘が側を離れなきや、假病けびやうを使ふとか、調子が出なきや横つ腹を突き飛ばすとか——」
平次は滅多にこんな手は用ひないのですが、相手が戀患ひの假病けびやうをつかつて、容易のことでは落ちさうもないと見ると、珍らしく十手などを取出して、逆手に疊の上に突つ立てるのです。