わい)” の例文
「さあ、わいが使に行く。金もドツサリ持つて來てやるぞ。」と言ふなり、文吾は山吹の部屋へと長い廊下を躍る風にして行つた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
わいはまだ若い、真打でもない、そら多少の気概はあるやろけれど、たかが甲斐性のない二つ目や」
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
そうですか、じゃあもっと夫婦らしくと豹一が言い出すと、わいに文句あるなら出て行け。
(新字新仮名) / 織田作之助(著)
彼らはひどくお喋舌しゃべりであって、どうも一向厳粛げんしゅくでなかった。全く礼節にかかわらなかった。「おめえ」だの「おいら」だの「うぬ」だの「わい」だのと、こういう言葉を平気で使った。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
それにこれはわいの色だ。ほかのものは赤い法衣ころもを着ることならんといふのぢやもの。人の物とか我れの物とかいふのは、一番分らん話ぢや。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
「己の勝手に馬みたいなものやりさらして裸になったかて、知らんでわいは。銭、貸されへん」
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)
「籤なんぞ引かんかて、わいが其の使したる。」と、文吾はいよ/\威丈高になつた。
石川五右衛門の生立 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
わい仕様しよない、こんな事情や、なにも苦労と踏んばってやれるだけやってみるが、お前は土台が江戸っ子や。なにもこないなところに愚図ついてることない、去にいな、もう東京へ」
寄席 (新字新仮名) / 正岡容(著)