人跡ひとあと)” の例文
人跡ひとあと絶えた山道には、人力車の通うすべもなかったので、二人の若い男女は、たがいに助け合いながら、蔦葛つたかずらう細道を、幾時間いくじかんとなくさまよい歩いた。
うららかに晴れて、黄昏か、朝か、気すずしくして、仲秋のごとく澄渡った空に、日も月の形も見えない、たとえば深山みやまにして人跡ひとあとの絶えたる処と思うに、東西も分かず一筋およそ十四五町の間
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)