二昔ふたむかし)” の例文
さよう、もう二十年にもなりますか、二昔ふたむかしになりますからね、どうもその間の細かいことは忘れてしまいました、はい、はい
鼓の音 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
別荘——といっても、二昔ふたむかし以前まえに建てられて、近頃では余り人が住んだらしくない、古めかしい家の中から、一人の百姓女がまりのように飛出して来た。
青服の男 (新字新仮名) / 甲賀三郎(著)
私が以前美女ヶ原で、薬草を採ったのは、もう二十年、十年が一昔ひとむかし、ざっと二昔ふたむかしも前になるです、九歳ここのつの年の夏。
薬草取 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
甚兵衞夫婦もく世を去り、月日はいつか二昔ふたむかしをすぎまして、二度目に生れた岩次と申す息子も十八歳と相成りましたくらいでげすから、お若さんも年を取りましたな。
もうやがて二昔ふたむかしに近いまえのことでした。わたしは竹柏園ちくはくえん御弟子おでし一人ひとりに、ほんの数えられるばかりに、和歌をまなぶというよりは、『万葉集』『湖月抄』の御講義を聴講にいっておりました。
大塚楠緒子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
「はあ、あの江戸絵えどえかね、十六、七年、やがて二昔ふたむかし、久しいもんでさ、あったっけかな。」
国貞えがく (新字新仮名) / 泉鏡花(著)