事務所オフィス)” の例文
人けのない、雨のビショビショ降る事務所オフィス街の薄暗がりに、たった一人立っている自分が俄かに佗しい気さえした。……
或る母の話 (新字新仮名) / 渡辺温(著)
夫人の本邸へではなく、内密で僕のこの事務所オフィス宛名アドにしてね。——今頃は屹度岸田の奥さん、大騒ぎで両国駅へ、チッキならぬワタリをつけているだろうよ。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
まちの人は朝はやく起きて店を飾り、またある人々は足を早めて、事務所オフィスに工場にいそぐ。緑の畑が麦を産し、涼しい青田が米になる。われらの労作は楽しいものである。
最も楽しい事業 (新字新仮名) / 羽仁もと子(著)
おれは魚揚ビッチフィッシュの助に出て、キングドックを選り分けては魚切機ブッチャーミシンへ行くエレベーターへ投げこんでいると、モオリーが事務所オフィスのほうからぶらぶらやってきて、魚揚機フィッシュデッキのそばへ立って見物をはじめた。
南部の鼻曲り (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
屏風浦を引上げて、大月と秘書の秋田がまるうち事務所オフィスへ帰ったのは、その日の午後二時過ぎであった。
花束の虫 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
事務所オフィスでは日本人のおれが相当にやるから半日本人セミジャパニーズのモオリーにも出来ないはずはないと考えたのだろうが、廻すほうも廻すほうだが、引き受けるほうも並たいていなわけでないと思った。
南部の鼻曲り (新字新仮名) / 久生十蘭(著)