乾飯ほしい)” の例文
むろん、今でも自分の小屋まで帰れば乾飯ほしいもたくさん残っている。が、俊寛には一里に近い道を歩く勇気などは、残っていなかった。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
かくて山城のカリハヰにおいでになつて、乾飯ほしいをおあがりになる時に、顏にいれずみをした老人が來てその乾飯を奪い取りました。
まあ、待て。ひとりや二人の乾飯ほしいざむらい、騒ぐにゃ当らねえ。おれが懸合いに行って、あやまり証文を取って来るか、馬の小便で顔を洗わせるか、かたを
宮本武蔵:06 空の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
同国北会津郡門田もんでん村大字御山おやまの乾飯沢なども、今ではホシイイザワと訓ませているが、元はカレイザワかも知れず、現に田に注ぐわずかの水流に、八幡太郎義家乾飯ほしいを洗ったという口碑を存している。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
三人で食い残した乾飯ほしいは、まだ二月、三月は、俊寛一人を支えることができた。が、成経がいなくなった今は、成経の舅から仕送りがあるはずはなかった。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
初め天皇が災難に逢つて逃げておいでになつた時に、その乾飯ほしいを奪つた豚飼ぶたかいの老人をお求めになりました。
虎のふんを見ただけである。あくる日もまた、乾飯ほしい、牛骨をぶり舐ぶり、この日もまた駄目。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その上に、都会人である彼らに、孤島生活の惨苦が、ひしひしと迫ってきた。毎日のように、水に浸した乾飯ほしいや、生乾きの魚肉のあぶったものなどを口にする苦しみが、骨身にこたえてきた。
俊寛 (新字新仮名) / 菊池寛(著)