中宮寺ちゅうぐうじ)” の例文
現代の私たちは千余年前にできたあの中宮寺ちゅうぐうじに蔵する「天寿国曼荼羅てんじゅこくまんだら」の色彩の前に、何の色をか持ち出し得よう。
工芸の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
或る秋の日にひとりで心ゆくまで拝してきた中宮寺ちゅうぐうじの観音像。——その観音像の優しく力づよい美しさについては、いまさら私なんぞの何もいうことはない。
大和路・信濃路 (新字新仮名) / 堀辰雄(著)
中宮寺ちゅうぐうじ観音とシナ六朝の石仏との間に著しい相違を認める人は、この画が初唐様式の画でありながらしかも気韻においてそれと相違することをも認めなくてはなるまい。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
しかし考えてみると、三月堂の不空羂索観音、聖林寺の十一面観音、薬師寺東院堂の聖観音、中宮寺ちゅうぐうじ観音、夢殿ゆめどの観音など、推古天平の最も偉大な作品は、同じくみな観音である。
古寺巡礼 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
東洋藝術のはらむ未来の文化財は大きくまた拡い。欧米と対蹠たいしょ的なものが沢山あるからである。例えばロダンの「考える人」と、中宮寺ちゅうぐうじや広隆寺の弥勒菩薩みろくぼさつ像とを比べると東西の対比がよく分る。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
中宮寺ちゅうぐうじ観音、夢殿観音、百済くだら観音等の神秘は、当時の人心の驚異と憧憬とを語りつくして余さない。初唐の大いなる国民的統一と活力の勃興とは、ある意味で六朝の憧憬の実現である。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)