不知哉いさや)” の例文
いうまでもなく、この男は、藤夜叉の養父であり、そしてこの附近の、不知哉いさや川の上流の一村に扶持ふちをいただいている佐々木家お抱えの田楽師である。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かねて当城におあずかり申していた、不知哉いさや丸の君も、越前ノまえ藤夜叉ふじやしゃ)も、いまはご心配にはおよびません。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
犬上郡の野路をすぎ、不知哉いさや川(昔はいさら川)を行くてに見出したときである。華やかな旅装の一と群れが河原に立ちよどんで、頻りとこっちを振向いていた。
私本太平記:01 あしかが帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おあるじの隠し子、不知哉いさや丸と藤夜叉ふじやしゃのことでも、どんなに長い日蔭の日を送ったことか。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
まったくこの場には無関係な感傷が尊氏の胸をふとすみのようにした。——藤夜叉が生んだ不知哉いさや丸である。いちども膝に抱いたこともない子だった。不愍ふびんな生れ性ではあった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
直義の手にひきとられていた養子の左兵衛佐直冬さひょうえのすけただふゆ(幼名、不知哉いさや丸)は、この一月ごろ、西国探題の名目をうけて、こつねんと都を去り、備後のともへんにとどまって、しきりに
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
不知哉いさや丸も十五です。いかに何でも、この春はもう、元服げんぷくさせねばなりますまい」
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)