上御一人かみごいちにん)” の例文
上御一人かみごいちにんまでが、百姓のため、宸襟しんきんをなやませられている事を、彼は、われのみの栄華におごって、かくの如く、民衆のためなど念頭にもしていない」
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
上御一人かみごいちにんですら激しい動きに直面したもうほどの今の時に、下のものがそう静かにしていられるはずもないと。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
眼前についえて行くふるくからの制度がある。下民百姓は言うに及ばず、上御一人かみごいちにんですら、この驚くべき分解の作用をよそに、平静に暮らさるるとは思われないようになって来た。
夜明け前:01 第一部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
るところを計算してですね、朝廷へ何ほど、公卿くげへ何ほど、大小各藩へ何ほどというふうに、その額をきめて、公明正大な分配をして来たら、上御一人かみごいちにんから下は諸藩の臣下にまでよろこばれて
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
おそらくこの世をはかなむものは、上御一人かみごいちにんですら意のごとくならない時代のかたさを考えて、聞くまじきおうわさを聞いたように思ったら、一層厭離おんりの心を深くするであろう、と彼には思われた。
夜明け前:02 第一部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
上御一人かみごいちにんですら進んで外国交際の道を開き、万事条約をもって世界の人を相手としなければならない、今後みだりに外国人を殺害したり、あるいは不心得の所業に及んだりするものは、朝命にもと
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)