三河国みかわのくに)” の例文
数十年前、三河国みかわのくに渥美郡田原町の青年が、ある夜、その町はずれ数丁離れたる所の寺院に集まったことがある。その堂後に墓場がある。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
手紙には、るると、以後の伊吹の城やまた足利家の根拠地——三河国みかわのくににおこった必然なともいえる——一変事を告げていた。
私本太平記:11 筑紫帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
これはあずまの銭なしが、一年ひととせ思いたつよしして、参宮を志し、かすみとともに立出でて、いそじあまりを三河国みかわのくに、そのから衣、ささおりの、安弁当のいわしの名に、紫はありながら、杜若かきつばたには似もつかぬ
伊勢之巻 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つまり随時に、駕籠になり馬になり、場合によっては、徒歩かちにもなって、江戸表からおよそ八十四五里の三河国みかわのくに幡豆郷はずのごう横須賀村よこすかむらの領地を指して、変事と同時に、一気に急いで来たものであろう。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)