一分いっぷん)” の例文
一分いっぷんの遅速なく発着する汽車の生活と、いわゆる精神的生活とは、正に両極に位する性質のものでなければならない。
思い出す事など (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「僕があのもう一分いっぷんまえに本屋から出て、それから、あなたがあの本屋へはいって来たら、僕たちは永遠に、いや少くとも十年間は、逢えなかったのだ。」
メリイクリスマス (新字新仮名) / 太宰治(著)
「何のかのと云って、一分いっぷんでも余計動かずにいようと云う算段だな。しからん男だ」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
一分いっぷん猶予ゆうよなく彼をすぐ前にある茶店の中へ引き込んで、彼の行こうとする宿屋の名をいたり、馬車に乗るかくるまにするかを確かめたりした上に、彼の予期していないような愛嬌あいきょうさえ
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)