一克いっこく)” の例文
「仕方がない。——いっそ何もかも知って置いて貰った方がいゝのかも知れない、——わたしの恥かしいことも一克いっこくなことも——」
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
「いいや、こんなことに年寄りの出るところやおへん」と一克いっこくそうに、わざと仰山ぎょうさん頭振かぶりをふったかと思うと
霜凍る宵 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
それはお前の一克いっこくというものだ。そんなに擯斥ひんせきしたものではない。何と言っても書記官にもなっている人だ。お前も少しはを折って交際つきあって見るがいい。
書記官 (新字新仮名) / 川上眉山(著)
現実的の精力を取籠とりこめられて行く人にありがちな、何となく世間に対しては臆病おくびょうでありながら、自己の好みに対しては一克いっこく癇癖かんぺきのようなものを持っていた。
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)