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こめみせ
そして
残の
人数を
二手に分けて、自分達親子の一手は
高麗橋を渡り、瀬田の一手は
今橋を渡つて、
内平野町の
米店に向ふことにした。
人々は黙つて平八郎の
気色を
伺つた。平八郎も黙つて人々の顔を見た。
暫くして瀬田が「まだ
米店が残つてゐましたな」と云つた。
勘定奉行
平川半治はこの議に
与らなかった。平川は後に藩士が
悉く津軽に
遷るに及んで、独り
永の
暇を願って、
深川に
米店を開いた人である。
今橋を渡つた瀬田の手とが
東横堀川の
東河岸に落ち合つて、南へ
内平野町まで押して行き、
米店数軒に火を掛けて
平野橋の
東詰に引き上げてゐた。