紅白こうはく)” の例文
赤松の間に二三段のこうを綴った紅葉こうようむかしの夢のごとく散ってつくばいに近く代る代る花弁はなびらをこぼした紅白こうはく山茶花さざんかも残りなく落ち尽した。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今年ことしみたいに、紅白こうはくはながたんといたとしい。一面いちめんめるやうないろだ。どこへつても垣根かきねうへしゆ御血潮おんちしほ煌々ぴかぴかしてゐる。
これがために昨夜ゆうべいへけて、いましがた喃々なん/\としてわかれてた、若旦那わかだんな自身じしん新情婦しんいろ美女びぢよで、婦人ふじん其處そこ兩々りやう/\紅白こうはく咲分さきわけてたのである。
みつ柏 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
草あやめの外には、芍薬しゃくやく、紫と白と黄の渓蓀あやめ薔薇ばら石竹せきちく矍麦とこなつ虞美人草ぐびじんそう花芥子はなげし紅白こうはく除虫菊じょちゅうぎく、皆存分に咲いて、庭も園も色々にあかるくなった。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
そのまえには、秋の草花、紅白こうはくのおもち弄具おもちゃやよだれかけやさまざまなお供物くもつが、いっぱいになるほどあがっている。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
山麓さんろくには、紅白こうはくだんだらのまくり、天幕テントり、高等官休憩所かうとうくわんきうけいじよ新聞記者席しんぶんきしやせき參觀人席さんくわんにんせきなど區別くべつしてある。べつ喫茶所きつさじよまうけてある。宛然まるで園遊會場えんいうくわいぢやうだ。
紅白こうはく帽子ぼうしの列が東と西に向きあってならんでいます。先生がまん中でふえをふきました。わあっとかん声があがります。紅白の波は向きあって進んできてぶつかります。
決闘 (新字新仮名) / 新美南吉(著)
長者町の筆屋の店頭みせさきは、さすが町内第一の豪家ごうかの棟上げだけあって、往来も出来ないほど、一ぱいの人集ひとだかりだ。紅白こうはくの小さな鏡餅をく。小粒を紙にひねったのをまく。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
鈴は紅白こうはくごと引千切られ、玉垣の下には、鈴の緒で縛られた死骸があつたと申します。
吾等われら上陸じやうりくしたへん自然しぜんまゝなる芝原しばゝら青々あをあをとして、其處此處そここゝに、れぬ紅白こうはくさま/″\のはな咲亂さきみだれて、みなみかぜがそよ/\とくたびに、りくからうみまでえならぬ香氣にほひおくるなど
町子まちこよいごゝちゆめのごとくあたまをかへして背後うしろるに、雲間くもまつきのほのあかるく、社前しやぜんすゞのふりたるさま、紅白こうはくつなながくれて古鏡こきようひかかみさびたるもみゆ、あらしさつと喜連格子きつれがうしおとづるれば
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
にんげんの子がうまれしと紅白こうはくのまんまろのもちおくり来しかな
小熊秀雄全集-01:短歌集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
蒲鉾かまぼこことをはべん、はべんをふかしとふ。すなは紅白こうはくのはべんなり。みないたについたまゝを半月はんげつそろへて鉢肴はちざかなる。
寸情風土記 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
宗助そうすけ例刻れいこくかへつてた。神田かんだとほりで、門並かどなみはたてゝ、もうくれ賣出うりだしをはじめたことだの、勸工場くわんこうば紅白こうはくまくつて樂隊がくたい景氣けいきけさしてゐることだのをはなししたすゑ
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
忍法試合にんぽうじあい紅白こうはく鞠盗まりぬすみの試合しあい瞬間しゅんかんだった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
差覗さしのぞのききずりの垣根越かきねごしくら廂合ひあはひまで、けばみな花壇くわだんがあつて、なかにはわすれたやうな、植棄うゑすてたかとおもふ、なんよくのないのさへえて、いつくしくしづかなは、派手はで大樣おほやうなる紅白こうはく
飯坂ゆき (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
紅白こうはく鞠盗まりぬす
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)