野兎のうさぎ)” の例文
馭者台ぎょしゃだいには野兎のうさぎが長い耳をたらしてぶらさがっていたが、これは遠方の友人がこれから行われる饗宴きょうえんのために贈ったものであろう。
駅馬車 (新字新仮名) / ワシントン・アーヴィング(著)
森の奥から火を消すばかり冷たい風で、大蛇だいじゃがさっと追ったようで、遁げたてまいは、野兎のうさぎの飛んで落ちるように見えたということでございまして。
眉かくしの霊 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
野兎のうさぎ※麻いちびの茂みの中で、昼にねらわれた青鷹あおたかの夢を見た。そうして、ねると※麻の幹に突きあたりながら、零余子むかご葉叢はむらの中にんだ。
日輪 (新字新仮名) / 横光利一(著)
とがめられた少女は、いきなりほうきを取り上げ、石炭函を抱えて、怯えた野兎のうさぎのようにそそくさと出て行きました。
森の中に、どこから出てきたのか、さるや、おおかみや、きつねや、野兎のうさぎや、鹿しかや、獅子ししや、たかや、わしなど、いろんな鳥やけだものが、あちらこちらにうずくまっているのです。
銀の笛と金の毛皮 (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
四千坪の大部分は樹木とかや、雑草で、畑は一反足らずです。外遊中は人気ひとけがないので野兎のうさぎが安心して園に巣をつくりました。此頃ではペン多忙で、滅多めったくわは取りません。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
かがみ込んだ野兎のうさぎのように、武蔵の眼は下り松のこずえ凝視ぎょうしする。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
御利益ごりやくで、怪我けがもしないで御堂おどうからうらはうへうか/\と𢌞まはつて、ざう野兎のうさぎ歩行あるきツくら、とちんかたちくと、たちまのちらつくくらがりに、眞白まつしろかほと、あを半襟はんえり爾側りやうがはから
麻を刈る (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)