身長せい)” の例文
と、狼狽して、紙帳の向こう側の隅へ、飛ぶように身を引き、そこへ、固くなって坐った若い、身長せいの高い、総髪の武士を認めた。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
僕は先生の部屋へやでいつの間にか泣寝入りをしていたと見えます。少しせて身長せいの高い先生は笑顔えがおを見せて僕を見おろしていられました。
一房の葡萄 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
また家へ歸つて行くと、丁度魚屋が來て、鯛や海老や蒲鉾の入つた蒸籠せいろうを、大人の身長せいの高さほど積み上げたところであつた。
父の婚礼 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
その大工は鍵屋の出入の者で、私はそれまでにも二三度顔を見たことがあつた。米吉とか云つて、二十五六の身長せいの低い少しどもる男だつた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
身長せいの高い、ラグビイ選手タイプの好青年で、勿論、姉の怖るべき犯罪を識り、懸命に匿っているものに相違ない。
アリゾナの女虎 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
その大立者のロイド・ジヨウジ氏が威爾斯エエルス生れの、身長せいの低い、やつと五尺そこそこの小男だとは知らぬ人が多い。
育つにれて、丸々とふとって可愛らしかったのが、身長せいに幅を取られて、ヒョロ長くなり、かおひどくトギスになって、一寸ちょッと狐のような犬になって了った。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
彼は自分自身のにわかな成長を、急に高くなった身長せいを、急に発達した手足を、自分の身に強く感ずるばかりでなく、恩人の家の方で、もしくはその周囲まわり
桜の実の熟する時 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
紅葉もみじするのは、して、何時か末枯すがれて了っている中に、ひょろ/\ッと、身長せいばかり伸びて、せいの無いコスモスが三四本わびしそうに咲き遅れている。
別れたる妻に送る手紙 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
大きな風呂敷でこけ猿の茶壺をしっかと背負ったお美夜ちゃん、淋しい夜道に、身長せいほどもある小田原提灯をブラブラさせて、一人とぼとぼ歩きに歩いた末。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
百人前ひやくにんまへ仕事しごとをしたからとつて褒美はうびひとつもやうではし、あさからばんまで一寸法師いつすんぼしはれつゞけで、それだからとつて一生いつしやうつてもこの身長せいびやうかい
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
第一だいいちに、もと身長せいにならなくては』と、もりなか徜徉さまよひながらあいちやんは獨語ひとりごとつて
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
身長せいは人並で、低い方ではないが、洋服を着た時の身体からだつきを見ると、胴がいやに長い割に足の短いのと、両肩のいかつたのが目に立ち、色の黒い縮毛の角ばつた顔が
人妻 (新字旧仮名) / 永井荷風永井壮吉(著)
唐子の下絵したえは楓湖氏の筆になったもので、それを見本として雛形ひながたを作る。ところが、その唐子というものはお約束通り、ずんぐりとした身長せいのもので大層肥太ふとっている。
彼女の後ろに身長せいの高い紳士が、エチケットの本のように、しとやかに立っていた。
(新字新仮名) / 池谷信三郎(著)
その年ごろは十八、九で、二十歳はたちまでは行ってはいないだろう。身長せいが高くてせぎすである。首なんか今にも抜けそうに長い。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
どの色も美しかったが、とりわけて藍と洋紅とは喫驚びっくりするほど美しいものでした。ジムは僕より身長せいが高いくせに、絵はずっと下手へたでした。
一房の葡萄 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
鉤が割りに低いところにあり、綱が長いので、普通なら身長せいが届いて縊死の目的は達せられないのである。
ロウモン街の自殺ホテル (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
ありがたう御座ございますとましてかほつき身長せいさへあればひと串戯じようだんとてゆるすまじけれど、一寸法師いつすんぼし生意氣なまいきつまはじきしてなぶりものに烟草休たばこやすみのはなしのたねなりき。
わかれ道 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
辰が天岳院前の樹下闇このしたやみに立停まると、そこに男が一人駕籠を下ろして待っていた。三次が遠くから透かし見たところでは、痩形やせがたの、身長せいの高い若い駕籠屋であった。
眞箇ほんとにそんなでした。あいちやんはいまわずか一しやくあるかなしの身長せいになつたので、これならそのうつくしい花園はなぞのこのちひさな戸口とぐちからけてかれるとおもつて、そのかほうれしさにかゞやきました。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
相変らず痩せて細かつたが、身長せいだけは伸び/\と、筍のやうに伸びて行つた。
世の中へ (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
人間なら人間のようにもっとすらりと身長せいが高ければ好いので、あんなに、ぶよぶよ肥太ふとって、ちんちくりんでは第一物をささげている台として格好が附かないと、まあ、こういった訳なんですから
惜し気もなく露出むきだしていたが、胸幅広く肩うずたかく、身長せいの高さは五尺八寸もあろうか、肌の色は桃色をなし、むしろ少年を想わせる。
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
その友達は矢張やはり西洋人で、しかも僕より二つ位としが上でしたから、身長せいは見上げるように大きい子でした。
一房の葡萄 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
普通ふつう身長せいになるまでには幾度いくたびおほきくなつたりちひさくなつたりしたかれませんでした。
愛ちやんの夢物語 (旧字旧仮名) / ルイス・キャロル(著)
身長せいが高くて、板のような胸だ。そして、茶色の顔に、眼がまた、不思議に赤い。
小肥こぶとりの体にやや低い身長せい。鋭い眼光に締まった口。ああそれはかつての大統領、またそれはかつての支那の皇帝、袁世凱えんせいがいの姿ではないか!
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
非常に身長せいの高い女で、よく言えばすらりとした、悪くいえば半鐘泥棒式の、しかし、前身が前身だけにいまだに凄いような阿娜者あだものだったが、このお美野にかぎって、若後家にもかかわらず
と呼びながら、身長せいの高い肩幅の広い男が、大えのきすその、やぶの蔭から、ノッソリと現われて来た。その声で解ったと見え
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「それに、身長せいもすこし高かった」
つづれ烏羽玉 (新字新仮名) / 林不忘(著)
身長せいも高く肉附もよく、高尚な健康美に充たされている。行儀作法を備えているとともに、武術の心得もあるらしく、その「動き」にも無駄がない。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
薄紫の単衣ひとえもの鞘形寺屋緞子さやがたてらやどんすの帯、ベッタリ食っ付けガックリ落とした髷の結振りから推察おしはかると、この女どうやら女役者らしい。よい肉附き、高い身長せい
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
十二人の処女らしい娘達に、守護されながら歩いている乙女の、何という美しく健康すこやかで、快活で無邪気であることか! 身長せいも高ければ肥えてもいる。
生死卍巴 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
びっくりしているような大きな眼、むっくりと盛り上がっている真っ直ぐの鼻、締りのいい大型の口、身長せいは高く肉附きがよく、十八歳とは思われない。
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女としては高い身長せいで、発育盛りの娘としては、少し痩せすぎていることが、一方欠点とは思われたが、一方反対にそのために、姿が非常に美しく見えた。
怪しの館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
彼女の身長せいは高かった。それが一層高く見えた。爪立ち歩く様子もないが。——姿勢のよくなったためだろう。
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
痩せてはいるが身長せいは高く、肩が怒って凛々りりしいのは、武道に深いたしなみを持っている証拠ということができる。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
浪人の眼の前に立っている大名のような貫禄のある武士は、身体からだつきや声のようすから見て、年はそちこち五十ぐらいでもあろうか身長せいは高く肥えてもいた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
あッという間に一人が斬仆きりたおされ、斬った身長せいの高い、肩幅の広い男が、次の瞬間に、右手の方へ逃げ、それを追って数人の者が、走るのが見えた。静かになった。
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
岩石人のおさであった。白髪が肩まで垂れていた。彼の右腕は千切れていた。身長せいだけは普通に高かった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
山袴やまばかま穿き、袖無しを着、短い刀を腰に帯び、畳んだ烏帽子えぼしを額に載せ、輝くばかりに美しい深紅のきぬを肩に掛けた、身長せいの高い老人が庄三郎の眼の前に立っている。
神州纐纈城 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
紅裏もみうらのついた丹前を、身長せいは並み、肉附きは以下——中肉以下に痩せていて、精悍さを想わせる体の上へ、肩からかけて羽織っていたが、それからむき出した左足に
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
俺ら、山男というからにゃ、頭の髪が足まで垂れ、身長せいの高さが八尺もあって、鳴く声ぬえに似たりという、そういう奴だと思ってたんだが、篦棒べらぼうな話さ、ただの人間だあ
八ヶ嶽の魔神 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
煙草たばこばかり吹かしている洪牙利ハンガリー人や、顔色の黒いヌビヤ人や、身長せいの高くない日本人や、喧嘩早い墨西哥メキシコの商人などが、黄金かねの威力に圧迫され、血眼ちまなこになって歩いている。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
ずんずん身長せいが延びて行った。やがて洞穴の天井へつかえた。三丈余りも延びたのであった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
桔梗様の年は二十歳ぐらいで、痩せぎすでスンナリと身長せいが高い、名に相似わしい桔梗色の振り袖、高々と結んだ緞子どんすの帯、だが髪だけは無造作にも、うなじで束ねて垂らしている。
神秘昆虫館 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
身長せいは高かったが痩せていた。苦痛のために痩せたものらしい。眼が眼窩の奥にあった。苦痛のために窪んだのであろう。瞳が曇って力なげであった。歩く足もとが定まらない。
十二神貝十郎手柄話 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
しかし、やがて、紙帳の裾が、鉄漿おはぐろをつけた口のようにワングリと開き、そこから、穴から出る爬虫類ながむしかのように、痩せた身長せいの高い武士が出て来た。刀をひっさげた左門であった。
血曼陀羅紙帳武士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
こういったのは大津絵の鬼——鬼の念仏の仮装をしている、身長せいの低い男であった。
血煙天明陣 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)